【大沢牛乳 × ダイリン】愛する声が、つなぐ日常。

2024.08.19 地域の人々

【大沢牛乳 × ダイリン】愛する声が、つなぐ日常。

わあ、懐かしい。あっ見たことある・・・！

読者の方のなかには「大沢牛乳」の文字とともに、見覚えのある方も多いかもしれません。
今回は、鴻巣市・北本市・吉見町の給食でもお馴染みの大沢牛乳さんを訪れてまいりました。

ぽてっとした形が愛らしい瓶入りの牛乳は、つい最近大手企業が製造から撤退を発表するなど、
出会うことさえも貴重なものとなりつつあります。
そんな中、現在も瓶入り牛乳の製造を続ける大沢牛乳さん、そこに宿る想いとは。

1 はじまりは始まりは、偶然に近いものだった。
2 味の決め手は、製造工程一つひとつに。
3 ピンチを救ってきたのは、いつも「声」
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はじまりは始まりは、偶然に近いものだった。

「1956年、11月9日に創業したと伝わっています」。年月日まで、なるべく正確な情報をこちらへ提供しようというその姿勢に、大沢牛乳・大沢和孝専務のお人柄が伺えます。創業したのは祖父の代。「吹上で400年近く農家をしており、祖父は新しいことが好きな人だったようでいろいろなことをやって、続いた事業が牛乳だったようです」。

その後はお父さまが二代目を務められ、現在はお母さまが社長でいらっしゃいます。「実は私よりも妻の方が務めて長いんです」と仰る横で、大沢由起子課長が取材班の人数分、2種類の牛乳を携えてきてくれました。「ぜひ、飲み比べてみてください」。一同「懐かしい！」と声をあげながら夢中でいただきます。「・・・ああ、美味しい」。誰からもなく声が漏れ、緊張がほぐれて話が弾んでいきます。牛乳はコミュニケーションツールにもなるんだな、と感じた瞬間でした。

味の決め手は、製造工程一つひとつに。

口当たりがなめらかで、牛乳の「旨み」が際立っている。かといって濃厚すぎず、喉を鳴らしてゴクゴクいきたくなる味わい。その決め手は、製造工程にありました。
特徴的なのは、殺菌の工程。130度ほどの高温で2-3秒、というのが通常の製法である一方、大沢牛乳では創業以来、85度で15分かけて殺菌しています。この方法だとタンパク質の熱変性が緩やかになり、カルシウム等栄養素の減少も抑えられるのだとか。「どちらも安全な方法であることは大前提として、通常の製法が焼肉だとしたら、うちはハムのようにゆっくり火を通すイメージです」と、和孝専務。
独自の製法でとろっとした口当たりを実現しているそう。「県北地域4つの酪農家さんの乳をもとに製造するのですが、乳牛が食べるエサによっても風味が変わるので、風味の維持が非常に繊細で難しいところですね。毎朝のチェックが欠かせません（和孝専務）」。

ピンチを救ってきたのは、いつも「声」

実は、大沢和孝専務・由起子課長のご夫妻は、大沢牛乳を継ぐ予定にはなかったそう。「継ぐ意志を持っていた4兄弟の三男が、病で他界してしまって。もう閉めるしかないかってみんなで話したんですけど、長年うちの牛乳を好んでくれる方々の声を無駄にはできないよねって。コロナの時も、学校閉鎖になって本当に事業としては大変な状況だったんですけど「子どもがここの牛乳しか飲まないんです」とか、遠方からわざわざ買いに来てくださる方のことを思うと、ね」と由起子課長。
「ビン専用の機械は創業以来のもので、メンテナンスできる会社も1社しかないですし、ビンの印刷ができるところも限られているんです。でもやっぱり、声がある限りは、この機械が動く限りは、という気持ちでやっています」と、和孝専務。
ファンの声が大沢牛乳の日常をつなぎ、歴史を紡いでいっているのだなと深く頷けるお話でした。