地域の人々

【ベリーズファーム・ハセガワ × ダイリン】そのポテンシャルを、最大限に。

125号線。行田市総合公園を見遣りながら脇へ入ると、さらさらと広がる小麦畑。その一角に見えてきた、大きなビニールハウス。
知る人ぞ知る、絶品いちごの生産・販売所【ベリーズファーム・ハセガワ】さんです。
入口には「整理券はこちら」の文字。
人気の高さが窺い知れ、
ハウスから漏れる芳しい香りからも期待が高まります。
今回はいちご栽培の現場にて、
代表・長谷川 裕晃さんにお話を伺いました。
転がるように話が展開され、これまで私たちは、
一体いちごの何を知っていたんだろう・・・?
そんな気持ちにさせられる1日となりました。

楽しさが、弾ける時間。

待ち合わせ時刻ちょうどに人数分のお茶を持って現れた長谷川さんは、
こちらからの質問を待たずして、ぽつぽつと話し始めます。いちごに対する理解・知識の量が半端ないのはもちろんなのですが、それが栽培・生産という観点のみならず、いちごという植物体への好奇心が原点になっているのが明らかで、まさに話の種が尽きません。
取材時は5月で、いちごの栽培としては終盤。長谷川さんは「いやあ、今の時期じゃなく冬に食べてもらいたかったなあ」と困ったように嘆くのですが、試食させていただいてびっくり。
持ち上げただけでわかる華やかな香り、硬めの皮を噛むと甘さが弾け、しっかり果汁を感じます。「うちの冬のあまりんはこんなもんじゃないんですよ。香りも強く、皮がもっとしっかりしていて、シャクシャク音がするんです」。

育ち方がまるで違う、冬と春。

「一般的にいちごは、開花日からの平均温度を足した温度、これを積算温度っていうんですけど、それが600℃に達すると赤くなって収穫できるんですね。品種にもよるけど、あまりんは700℃、開花から45日程で収穫です。12月から2月の間はハウス内の暖房を6℃に設定していて、直射日光も弱いのでゆっくり育ちます。植物なんでもそうですけど、冬は休眠して栄養を蓄え、本能で春を察知して花を咲かせるんです。冬は花芽も一つで出てくるから、その分栄養がぎゅっと集中する。なかでもいちごにコクのある甘みを与えてくれるショ糖は、開花から35日を過ぎてから蓄積され始めるんです。ところが春になると外気温が上がり、直射日光も強くなるので積算温度600℃に達するのが早いんです。ということは、収穫のタイミングも早まって、ショ糖が十分に蓄えられていない。花芽も2-3に分結して出てくるんで、栄養も分散されるんですね。だから、春の方が収穫量は増えるけれど、味の面で言えば冬の方が圧倒的に良いと思いますね」。

自動車畑から始まる、いちご物語。

さらに話を進めていくと、なんと長谷川さん、埼玉県からの依頼を受け、あまりんの品種開発にも携わっていたというではありませんか。当時から今現在に至るまで「農作物は同じ品種でも作る人によってまったく別物になってしまう」ため、いかにブレなく、品質を高い水準で保つかに注力し続けているといいます。その手法がまた、興味深く。
僕は元々自動車畑の人間でして、整備士や板金工の資格も持っているんですけど、27歳の時にですね。当時農業で食べていくのは非常に厳しくて、祖父が農業をやめる、と言った時、ふと挑戦したくなったんです。農業大学校へ行って基本的なところを学んでから、元々F1レースなんかも好きだったので、そういうエンジニアリング的な考え方が活かせないかなと。【リバースエンジニアリング】という手法を使っていちごを解析して、目的に合わせてピークパフォーマンスが出せるような苗の構造や設計、設備や生産ラインの見直し等をしてきました。将棋で何十手先を読んでいくのと同じですね。スーパーで売るいちごなのか、いちご狩り用なのか、百貨店向けなのか、相手が求めるものに応じて植物体が持つポテンシャルが最大限に引き出せるよう「仕立てていく」というところにどうやら自分は向いているようで、今はいちご農家さんのコンサルタントとして栽培指導もしています」。

極力シンプルにして、成果を上げる。

例えば、収穫が終わり枯れかかっている葉は摘み取るのが一般的だとされていますが、長谷川さんは実を長く木に止まらせて甘さを蓄積させるためにも葉を間引かず、クッションとして利用していちごの茎が折れるのを防いでいるそう。手をかけるところ・かけすぎないところを見極め、味に波がないような作り方を心がけています。いちごの実は糖のタンクのようなもので「一般的には45日ほどで収穫ですが、うちのピーク時のいちごは約70日間、木についている状態」なので甘さが極まるのだそう。通常の1.5倍もの期間、木につけられていられるのは、外皮が硬い構造に仕立ててあるからこそ。「カルシウムとケイ素が細胞密度を上げ、外皮を硬くするんです」。惜しみもなく、秘訣を教えてくれる長谷川さんの根底には、いちご業界そのものを底上げしたい、という覚悟のようなものが見えました。

あまりん直売は毎年1月ころからスタート。

3月からは収穫量が増えるため、入手しやすくなります。

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代表 長谷川 裕晃さん

クリスマスケーキのいちごに甘みが少ない理由、あまりんが味重視のいちごとして開発された理由等、思わず「へえー!」と唸るお話をたくさんしてくれた長谷川さん、楽しい時間をありがとうございました!

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information

ベリーズファーム・ハセガワ
行田市和田800-1
080-5030-1583